前作の「君の名は。」が大ヒットした新海誠監督の新作、天気の子を見てきました。
ネタバレになるような本筋にはふれないように感想を書いていきたいと思います。
映画館での予告では、公式サイトにある予報②が流れていましたので、事前情報はこれと公式サイトのみということになります。
「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。
天気の子 公式サイトより
監督の傾向と前提
新海誠監督の作品の傾向として、日常の中に非日常のものを2つ物語の鍵として入れてきます。
君の名は。では「入れ替わり」と「彗星」が非日常、天気の子なら「100%の晴れ女」と「銃」が非日常で物語を動かす鍵となります。
都会と田舎の対比も好きですね。天気の子の舞台は東京がメインですが、主人公の帆高は神津島から家出してきた設定です。
「君の名は。」では東京と飛騨、「秒速5センチメートル」では東京、栃木、種子島が舞台です。
主要な登場人物は、物理的に距離が遠いのも特徴です。
とはいえ「ほしのこえ」は光年単位の距離ですが、作品重ねるごとに物理的な距離は縮まってきています。地上と地底から比べれば、東京と飛騨はだいぶ近くなりました。
天気の子はめっちゃ近いです。ほぼほぼ0距離といっていいレベル。
あと新海誠作品によく出てくるのは、坂道、電柱と電線、空と雲と宇宙…そんなところでしょうか。
これらの景色を圧倒的に美しく描き出してきます。
天気の子のストーリー
話の構成は「君の名は。」と似ていて、
登場人物の紹介→不思議な力とその活用→その後の代償→もう一度会いたい→その後
といった流れになっています。
予告で想像していた流れと大きくは変わらないのですが、
一番危惧していたのは「天気の子」も会えるor会えないに帰結するラストになること。
「君の名は。」は、一言で言うならば「会える版秒速5センチメートル」だと思っていて、会えるor会えないの話になってしまっています。
その点で「天気の子」は会えるor会えないの後の話があります。今までの作品にはなかった大きな変化です。
銃の登場も、「家出少年」だけでは警察にマークされる理由としては薄く、警察を動かす動機付けとしての小道具として、最低限に抑えたなという印象です。
また、主要な登場人物のやりとりは顔を合わせての会話がほとんどで、スマートフォンとインターネットが普及して画面に向かう描写が多い現代では、この依存していないような感じがとても新鮮に映りました。
一部、依頼主と会社のipadでやりとりしている描写がありますが少ないです。
監督、あんなに携帯電話やメールや手紙が大好きだったのに。
天気の子の傾向
カメオ出演
「君の名は。」の瀧くんと三葉ちゃんが出てきます。
クレジットには四葉ちゃんの名前もありました。
「君の名は。」には「言の葉の庭」のユキノさんがユキちゃん先生として出てきますので、新海誠監督のカメオ主演はリレー形式なのでしょうか。
次回作には天気の子の帆高と陽菜さんも登場するかもしれませんね。
伝承
言い伝えや伝承も、最近の作品ではよく出てくる要素となっています。
「星を追う子ども」あたりからでしょうか。
「君の名は。」も言い伝えが大きな要素となっています。
ただ、この伝承や言い伝えの部分の伏線は回収されない傾向があって、
今回もあの事象や寒天みたいなアレとかの話はよくわからないままです。
ジブリ
途中、ジブリ作品を
雲の上のシーンは天空の城ラピュタ、落ちるシーンは千と千尋の神隠しを思い出しました。
雲の描写もラピュタや時をかける少女っぽいなと思いましたが*1美術に山本二三さんの名前がありましたので、納得です。
広告
今作は協賛企業が多くて、ロゴや社名がそのまま出てきます。
Yahoo!知恵袋なんてそのままですし、東京の描写をすると広告、看板は外せないので、
ロゴや社名がそのままですとリアリティが増しますよね。
序盤で、求人バニラのトラックが音声付きで出てくるのも驚きました。
私、生でバニラのトラックを見たことがないのですが*2実際あんな感じなんでしょうか。
気になります。
夜のお仕事とラブホテル
求人バニラもそうだけれど、序盤で帆高は夜のお仕事のボーイの面接を受けに行きますし、
スカウトマンに付いて行く描写もあります。
中盤ラブホテルにも泊まります。
お風呂とか楽しんだ後、陽菜さんがローブを脱ぐシーンがあるので、R指定はついていないけど苦手な人は注意した方がいい。
誰かと見に行くなら、この辺を見ても気まずくならない関係の人と行くのがいいよ!
まとめと対策
- 秒速のような終わり方ではないので、見た後に鬱になるといった感じではない。
- 銃が出てきて人に向けるシーンがあったり、夜のお仕事の話が出てくるので、バニラの広告見てそれが何か理解できるのかもよくわからない年齢層に見せるのは微妙。
- 高校生でもデートとして見に行くと、そのあとの会話に困ると言うか…、微妙な雰囲気になりそう。
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誰かと見に行くなら、銃と夜のお仕事の話を一緒に見ても気まずくならない関係の人と行くのがいいよ!私だったら親とか家族と一緒には見ない。
過去の新海誠監督の作品はAmazonPrimeVideoで見られます。
個人的な感想
絵はきれいで描写も圧倒的な迫力でで美しい。
新海誠監督の一番の売りは健在です。
一方で話の作り方が荒く感じました。
逆にストーリーで言われない部分を、絵の美しさで圧倒してぶっちぎっていると言いましょうか。
そこまで含めて新海誠監督らしい作品に仕上がっています。
話は「彼女と彼女の猫」に「天空の城 ラピュタ」と「千と千尋の神隠し」の要素を足して行った感じ。
銃と夜のお仕事が話の要素として入ってくるので、対象年齢が上がってしまうのか、
「君の名は。」の次の作品だからと見に来たであろう親子連れの、
特に親が微妙な顔をしていたのは印象的。
そういう所をぶっちぎって、丸く収まった作品にしない、
ミカコも、あかりちゃんとたかきくんも、森崎先生もユキノだってそう。みんなハッピーエンドには収まらないのもまた新海誠監督らしさだと思うのです。
むしろ「君の名は」が驚くほどにハッピーエンド!で丸く収まってる!なぐらい。製作委員会方式の賜物なのでしょうか。
予告の印象と大きくは変わらないですが、シーンと楽曲が本編は逆になっていて、予告の方が曲と画面が合っているように思えました。
本当に個人的な意見ですが、新海誠監督は短編とかCMのが出来がよいと思います。
初期の頃はストーリーが暗くニッチになる傾向が見受けられたので、
CMなどでスポンサーの意向や第三者の目がある方が、良いものを作っている印象が強いです。
短編だとストーリーの粗さが目につく前に話が展開しますし、説明を省くのも見る側としては納得できるのです。
大成建設のCMは目を見張るほどに素晴らしい出来です。
私が一番好きな新海誠作品はだれかのまなざしです。
これも野村不動産がスポンサードした作品です。
以前はyoutubeで公開していたのですが、現在は終了しています。
ソフトにも入っていないようで、また見る機会があればいいなと思っています。