ぐでぺんLIFE

歯列矯正とか旅行の思い出とか日々のお役立ちとか、いろいろ書いてます。

わたしと英語

大学受験期、英語は苦手科目だった。正確には英語が苦手というよりも、英語の先生が苦手だったのだけれども。英語の勉強を避けているうちに、受験科目としての英語も苦手になってしまった。わからない単語も文法も、フィーリング。長文読解の問題、そもそも読まなくても知ってて知識だけで答えられる問題もあったので、さらに英文を読まなくなった。センター試験や模試でも7割取れるかどうか。点数としては良くはない。そして一旦は大学に入ったものの中退して就職。仕事でも英語を使うことなく生きてきた。だから社会人になった今でもそのまま英語は苦手だと思っていた。

 

社会人として5年目のとき、初めて海外旅行に行くことになった。行き先はフロリダのディズニーワールド。初めてのアメリカ、英語の国。うっっひゃー、大丈夫かな……なんて思いながら空港に向かい、高校の修学旅行で沖縄に行った以来の飛行機に乗った。国際線も10時間を超えるフライトも初めてだった。JALで行ったので国際線部分は日本語でよかったし、アメリカの入国も「ディズニーワールド」でなんとかなった。今思えばあの入国審査が海外で英語を使った初めての経験だった。ツアーだったので乗り換えも空港での乗り換えのためのガイドさんがいて掲示板の見方を教えてくれたし、到着してからもディズニーのホテルまでは送迎付きで日本語ペラペラな運転手さんだったので一切問題なく到着してしまった。ホテルのチェックインは運転手さんがしてくれてた。なのでほとんど英語で困ることなくホテルの部屋まで来れてしまった。

 

さっそくパークに向かった。何せ大きい。ホテルからパークへ向かうシャトルバスもモノレールも、それ自体がアトラクションのようだった。

 

アメリカのディズニーパークにはフォトパスという写真を撮ってくれるシステムがある。至るところに写真撮影専用のキャストがいて、彼らにフォトパスカードを渡すと撮影したデータをカードの番号に紐付けしてくれる。1人で行ってもグリーティングなどの撮影に困らないようになっている。

さっそく見つけたフォトパスのキャストにフォトパスカードを渡そうとした。

 

Say,Hello.挨拶をしなさい。

 

キャストさんから返って来たのはこんな言葉だった。頭を殴られたような衝撃を受けた。日本でなら黙ってカードを渡しても写真をとってくれるだろう。でもここは日本じゃない。彼女だって黙ってカードを受け取って写真を撮ることだってできただろうけれども、そうはしなかった。Say,Hello.とここでのルールを私に教えたのだ。ここは黙っていても相手が察してくれる場所ではない。挨拶とコミュニケーションが必要で、彼女たちと私達は対等な場所なのだ。

 

Hello.

彼女はニコッと笑ってHelloと返事をしてして写真を撮ってくれた。

恥ずかしかった。何と言っていいかわからなくて、黙ってカードを渡そうとしてしまったのがとても悔しくて恥ずかしかった。

でも彼女のおかげでここでのしきたりがわかったのだ。その後はHelloだったり、Goodmorningだったりとフォトパスのキャストを見るたびに挨拶していった。繰り返していくうちにだんだんと物怖じしなくなっていった。中学で習った英語、通じるじゃん!すごい!英語って本当に通じるんだなと、今まで紙の上で形が並んだものでしかなかった英語が、急に立体的になり輪郭をはっきりとさせた。

そうは言っても初めての海外、アメリカ。聞き取れないこともたくさんあった。なんと言ってもいいかわからないこともあった。それでもディズニーワールドだからか、キャストさんたちは困っていることないか、できることはないかと、私の拙い英語を何とか聞き取ろう、コミュニケーションを取ろうと努めてくれたのが痛いほどにわかった。

 

もっと英語が喋れたらいいのに。

 

強く感じた瞬間だった。

 

アメリカで自分の至らなさを痛感しながらの帰国後、一時期は英語の本を読んだり単語を覚えたりはしていたものの、次第に日常の忙しさにかまけて英語の勉強から遠ざかっていった。たまにyoutubeの英語動画を見るぐらい。日本で仕事や生活する分には英語を使う必要はなくて、次第にあの悔しさも忘れていった。

 

ディズニーから3年後、今度はハワイへ行った。

ハワイへ行くことが決まったとき、ワクワクが7割、フロリダ以降英語の勉強が進んでいないのの後悔が3割だった。もっと勉強しておくんだった……!でもそう思うだけでは何も身につかない。せめてレストランの注文ぐらいは…と、youtubeで英会話の動画を見漁った。

そのおかげか、観光地で相手も日本人慣れしているということもあってか、ハワイではツアーでなくても、ホテルのチェックインやレストラン、お買い物などは大きなトラブルもなく自力で何とかできた。相手の言っていることも全部ではないけど半分ぐらいはわかる!フロリダのディズニーで感じた「できなかった感」から一転、まだまだだけど「できるようになった!」達成感でうれしくなった。そして自信がついた。

 

 

 

ハワイで泊まったホテルでのことだ。レストランの会計で揉めていた。英語が聞き取れなくて詳しいことは分からない。でも一つだけはっきりと聞き取れた単語があった。ウエイトレスの発した"No!"だった。裏から少しかしこまった格好の人が出てきて、客側とウエイトレスから状況を聞いていた。頷いた後、客側に断りを入れた。客側の要求を飲まなかったのだ。毅然とした態度で物腰と言葉は柔らかく、でも聞こえる"No"に、ああ、ここでは売る側と買う側が対等なんだなと、はっきりとNoと言ってもいいんだなと思った。日本で仕事をしていると「お金を払う方が上、お金をもらう方が下」という空気が蔓延していて、息苦しかった。何でも周りがお膳立てしてくれるのが当たり前、金額以上のサービスを要求しておいて自分の要求が通らないと激昂したり、お金を払うのを渋ったり。無理な要求でもお客様のご要望にはお応えするように対処しろと上からはお達しがくる。もう辟易として疲れていた。そんな私の心に南国のカラリとした暖かい風が吹き抜けていったようだった。

 

英会話や英語に触れるうちに、物事に対する考え方が変わっていった。言葉は使われている場所の文化や考え方を内包する。

日本で育って、かけられてきた日本語は、「器量もよくないし、くだらないことばかり覚えて、運動がからっきしダメでどうしようもないんです」「あいつブスじゃねww」「キッモwww」「お前、友達いない癖に」「うちにはお金がないのに」「お前は非常識!」「お前のせいだ」などなどの、謙遜という名を借りた否定や、心無い批判、ネガティブな言葉ばかり。褒められることや優しい言葉をもらうことはあまりなく、結果的に自己否定の塊のような人間に育ってしまった。育ってきた環境が大きいのだけれども、日本語では褒める言葉も肯定する言葉も紙の上のもので、生きた言葉だとはとても感じられなかった。悲しいことに私の中では日本語は母国語なのに「否定が常に付きまとう言語」になってしまった。

 

英語や英会話を勉強をする中では、肯定したり褒めたりといったポジティブな言葉にたくさん触れた。特に初心者向けの内容はポジティブなものが多い。レベルが上がってくると批評や良くない状況なども題材に出てくるけれど、状況説明や自分の主張としての反対意見はあっても、頭ごなしに批判ばかりしている内容のものはほとんど無かった。文化の違いなのか、それとも前向きな文章が題材にされているのかはわからないけれども、英語を勉強しているうちは、不思議とひとりの人間として扱われているように感じた。ポジティブな内容の言葉をたくさん浴びるうちに、自分自身の考え方もよりポジティブに変わっていった。

否定されてばかりいたころは、どうしても「自分は周りからこれだけ否定されてきたから他人に対しても批判するのが当たり前」と考えがちだった。ポジティブな考え方に変わった後は他人に対しても肯定的な発言ができるようになった。自分がしてもらったことしか、自分からは返せない。私にとって自分を否定されたのは母国語である日本語で、自分を肯定されたのが外国語である英語だった。それが何語であったとしても、ただそれだけのことだ。でも、いつの間にか、あんなに苦手科目だった英語を学びたい…そんな気持ちになったのも確かなことなのだ。

 

言葉には使われている場所での文化や物事の捉え方や考え方がにじみ出る。初心者が学ぶためのものは特にその傾向が強い。英語でも学習を深めていくうちに、日本語よりもバラエティに富んだ差別語や侮蔑語にも触れることになる。「英語が優れていて日本語が劣っている」だけでは決してないのはわかっている。それでも日本語での文化や考え方だけでは自分を無条件に肯定されたと感じることはなかったかもしれない。英語での文化や考え方にふれて初めて得た気づきだ。

 

「英語が自分の世界を広げてくれる」とよく言われる。英語ができれば本や雑誌、インターネットなどでたくさんの情報を得ることができるし、仕事でだってやりたい仕事に就けるかもしれない。海外に行っても困らないかもしれない。そしてできることが増えるのは達成感と充実感がありとても嬉しい。そして母国語とは違う言語に触れることで、今までとは違う考え方を手に入れることだってできるのだ。

英語に触れ続けることで、私の心にはあの南国のカラリとした暖かい風が吹き続けている。

 

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